積層する記憶

版築構法を用いたセルフビルドによる小学校の提案

PROJECTS

​学部設計課題

LOCATION

愛知県名古屋市中区 / Naka-ku, Nagoya, Aichi

YEAR

2018.02 (Unbuilt)

PROGRAM

小学校/Elementary School 

AWARD

トニカ北九州建築展2018   最優秀賞

建築新人戦2017       BEST16 / 902人

DesignReview2018               入選

負の産物が繋ぐ未来

2027年・2037 年のリニア開通により、三大都市が結ばれることで都市形態の過密化が進む名古屋駅界隈。過渡期にあると言えるこの場所に、小学校を設計する課題である。都市開発による住環境の悪化は都市の空洞化を促進し、生産年齢人口の移転に伴う児童数の激減により、この地域では小学校の必要性は失われる。そのため、廃校後の建築としてのあり方を考え設計を行うことが重要となる。本提案では、建設プロセスからフォーカスを当て、都市化の元凶とも言えるリニア開削に伴う残土を建材として捉え、土を用いた版築工法により、地域住民によるセルフビルドで小学校をつくりあげることで、この街の象徴となり、廃校後も原風景として、街の在りどころとして継承されゆく場所をつくることができるのではないかと考えた。

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残土の建材としてのポテンシャル

プリミティブで簡易的な工法でつくる

リニア開削現場は本敷地のほど近くを横切っており、残土を建材とするならばその資源の豊富さが見て取れる。地産地消ともいえる残土利用をすることで、建材費の削減・建材運送によるCO2削減を計ることができる。また日本に分布する土質は多種多様であり、その地域ごとに様々な特徴がある。土質の特徴を捉えることで、建材として用途に適した利用をすることが可能となる。工法においても土を突く・固める等の簡易的な手法を採ることで、有識者のサポートのもと小さい子供からお年寄りまで誰もが建設に携わることができる。共同による作業がこの建築にストーリーを生み出し、地域住民にとっての原風景となり得る場所が育まれる。

合理的なプランニングが生み出す環境と意匠

版築工法では、通常の建築物のように開口部を設けることは難しい。そのため、南北軸に対してレイヤー状に版築壁を広げ、その隙間を主要な開口とし採光や通風を得る計画とし、東西方向に対しては構造耐力を損なわないよう廊下となる部分のみをスリッド状に縁を切ることとした。また東西方向からの採光と通風を得るため、版築壁にレベル差を持たせ片流れ屋根とし、ハイサイドライトを設けた。チムニー効果により換気を促進する他、レベル差を一定ではなく多様にすることで、採光や通風を得るのみならず空間に多様性を与え、連続する不規則な片流れ屋根により建築物としての意匠を生み出した。

断面詳細 - 構成ダイアグラム

版築工法の実験

本提案では、残土とにがりとしての消石灰をそれぞれ3 : 1の調合比率で用いることを提案する。この実験では市販の鹿沼土・真砂土・赤土を用い、消石灰の代わりにセメントをそれぞれ6 : 1の調合比率で混ぜ合わせ版築工法の実験を行った。力作業ではあるが、突いて固めるだけという単純作業のため、誰もが建設に携わることができるという工法に魅力を感じた。地域住民共同のプロジェクトとして施工を行うことで、一人一人がこの建築にストーリーを持つことができ、街の象徴として、原風景として愛されていくのではないかと思う。

経済的合理性の高い設計手法