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SETAGAYA RURBAN APARTMENT 

​住居地域における「生産緑地」を媒介とした「住みながら耕す賃貸住宅」

PROJECTS

​卒業設計/Diploma Projects

LOCATION

​東京都世田谷区 / Setagaya-ku,Tokyo

PROGRAM

​集合住宅/Apartment

AWARD

優秀賞/タジマ奨励賞

2018年度日本建築学会設計競技

歴史的空間再編コンペティション2018

グランプリ

YEAR

2019.03 (Unbuilt)

NAGOYA Archi Fes 中部卒業設計展

ファイナリスト/ 企画審査1位

未来農業創造研究会第四回 大地の力コンペ

未来シーズ賞(農福連携)

「農」が創る懐かしい未来へ

2022 年には、画一化する住居地域において唯一の土着的要素と言える「生産緑地」の指定解除を受けた農地が大量の良質な宅地として市場に出回り、収益性を重視した従来型のアパートやマンション・住宅へと変換される。このような戦後以降続く画一的な供給システムが、現代の住居地域におけるプロトタイプが運びる無縁社会を生み出しているのである。平均世帯数の減少や高齢化、待機児童問題など、小さな家族単位では賄えない問題を抱える今こそ、このような供給システムの過渡期にあり、 相互扶助を目的とした地縁的なコミュニティの再編という視座での開発が必要となるのではないか。 本提案では、住居地域に根付く生産緑地という土着的資本を、実現可能な事業計画のもと、「住みながら耕す賃貸住宅」という生産緑地を持続可能にする賃貸スキームを提案することで、耕すというプリミティブな行為を媒介としたローカルな共同体がつくる懐かしい未来の風景を提示する。

都市に残された土着的資本「生産緑地」

生産緑地とは、都市部において公害または災害の防止、農林漁業と調和した都市環境の保全などに役立つ農地を計画的に保全するため行政から指定を受けた農地のことを指す。都市において生産緑地は多面的な役割を担う存在であり、都市圏を中心に総面積1万haを超える生産緑地が全国に分布している。1974年に制定された「生産緑地法」の目的と現在の位置付けは都市環境の保全として合致しているが、1992年に改正され今なお続く生産緑地の制度においては、都市圏の住宅不足を解消するため、市街地農地の宅地化を促すために課税や30 年間の営農義務により都市農家に負荷をかけるような仕組みとなっている。

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2022年問題-宅地としての潜在的ニーズが高い生産緑地

生産緑地法が1992年に制定され、指定されて30年後の2022年には、生産緑地の営農継続か解除による宅地化の二択が迫られる。営農が可能な場合は引き続き「特定生産緑地」として10 年単位で再指定することができるが、農業従業者の深刻な高齢化や、それに伴う後継者がいないため、もともと農業所得の少ない生産緑地農家にとってその選択肢はもはや宅地化の1択となりつつあり、その際にも生産緑地に指定されることで猶予されていた相続税を利子付きで支払わなければならないなど、都市農家に様々な負荷が生じる。そもそも生産緑地とは、都市圏の住宅供給を促すために市街地農家に対して宅地並み課税とした地域にあり、その課税を逃れる代わりに30年間の営農を義務付けられた場所である。つまり、この生産緑地の指定を受けている農地は潜在的に宅地としての価値が認めれている地域であり、規定として300㎡以上(2017年改正)の広さが担保されているため、開発業者にとってはビジネス展開のしやすい良質な宅地と見なされる。2022年にはこれらが一挙にして放出されるため、業者の利潤を求めた住戸の過剰供給、それに伴う工業化された住居がつくる画一的な街並みなど、多面的な影響が生まれる。

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​従来の供給方式に則した宅地開発によって失われゆく土着的資本

既存制度への疑問から第三の選択肢を構築

生産緑地を巡る制度において、そもそも営農の継続か宅地化の二択しか選択の余地が無いことに疑問を抱く。高齢化社会を迎え、全国の平均世帯数が減少する現代社会において、1農家が広大な1区画を耕すシステムには最早限界がきている。また全国的に見ると新規就農者数は年々増加しており、潜在的な農のニーズは高いことが見てとれる。これらの農のニーズと都市農家を結ぶ第三の選択肢を構築することができれば、都市において多面的役割を担う農地を守り、従来のように目先の利益を追求したプロトタイプが蔓延る住居地域の風景を変えることができるのではないか。本提案では生産緑地法の変遷から抽出した二つの既存制度を活用することで、生産緑地に住みながら耕す賃貸住宅のプロトタイプを提案する。これにより、農への潜在的なニーズが生産緑地農家へと結びつき後継者不足を解消し、生産緑地農家の稼げない問題を賃貸収入による安定した収入を得ながらも農家レストラン等を設け六次産業化することにより収益性を向上させることができる。こうして、都市農家の抱える根本的な問題を生産緑地に住むことで解消し、宅地化され目先の利益を追求した住戸プロトタイプの量産により土着的要素が失われることを防ぎながらも、住居地域に生産緑地を活かした小さな六次産業圏による土着的住文化を生み出す。

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東京都世田谷区を対象としたケーススタディ

本提案は全国の生産緑地に応用可能な普遍的モデルを示すものであるが、ケーススタディにおいては東京都世田谷区を対象とする。世田谷区は区内2番目の約88haもの生産緑地を有し、高密に広がる住宅地の中に数多く点在している。区内においての宅地ニーズは高く、また農業従事者の6割が高齢者にあたり、そのうち後継者は2割もおらず、後継者そのものが高齢化していることから、生産緑地の多くが宅地化される可能性が他地域に比べ特に高いと言える。また、区内一位の生産緑地数を誇る練馬区や県外の密集地域と比べ兼業農家が多く、行政としても生産緑地の保全の取り組みに対し具体的な策を講じていないことも選定理由のひとつである。

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​参考文献:都市農地はこう変わる 著者:倉橋隆行 林 愛州 発行:プラチナ出版株式会社

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